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7665日の物語 29

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小説
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茜ちゃんから店舗に電話があった。

「ネロが。。急にご飯のどに詰まらせちゃって。。。口の中に手を突っ込ん

で吐き出させようとしたんだけど全然出してくれなくて。。。息してくれな

いの。。。いま獣医さんに居るんだけど。。』夕方のピークタイム。ドライ

ブスルーは勿論の事、店内のお客様まで外に並ばれている状況だ。流石に

すぐに駆けつけられるわけもなく、僕が帰宅したのは深夜3時だった。

家族みんな起きて待っていた。ネロはお父様が作られた棺に入り、周囲をド

ライアイスで固められていた。生きとし生けるもの必ず別れは訪れるが、

あまりにも早い別れだった。今思い出すと名前を付けるとき、彼女がネロに

しよう!と言ったのではない。正確には僕が「ネロがいいなー」と言い出し

たのだ。両親がブルーシートで囲まれて降ろされている時に、僕の手の中で

息を引き取った猫の名前をあの時みんなで「ネロにしよう!」と決めていた

からだ。その経験から「ネロ」という名前を付けた訳ではないが、記憶の片

隅にその名前があったのだろう。むしろ「いいね!」と言ってくれたのは茜

ちゃんだった。

『風間君、ネロが。。。ネロが。。。』

僕は静かに彼女を抱き寄せて抱きしめた。彼女にとっては初めて命と別れる

瞬間に立ち会ったのだ。そのつらさは僕も痛いほどわかる。

『どうしてすぐに帰ってきてくれなかったの!!』

声を荒げた娘に師匠は言った。

『男の仕事は戦場だ。ペットが死んだからって帰れるか!無茶言うな!!』

『師匠!!』と遮ろうにも遅かった。彼女はネロの棺を持って部屋にこもっ

てしまった。何度声を掛けても返事をしてくれなかった。物理的考慮をすれ

ば亡骸なので腐敗が進まない内に火葬して埋葬、供養してあげるべきなのだ

が、今の彼女は放しそうにない。。

『風間君、明日もお仕事でしょう?茜とネロはこちらでちゃんとするから

寝てちょうだい。。。』お母様にそう言われて僕は制服のまま横になった。

結局茜ちゃんが気になって眠れず、そのまま顔だけ洗って出勤した。この仕

事になってから徹夜は珍しい事では無く、3日・4日は当たり前、睡眠時間が

1時間を切る1日も多々あったので、1日寝ないくらいで僕の体はどうこうな

るはずもなかった。「ネロは無事に旅立ちました」の連絡を待ちながら仕事

をしていた。ずっと気になっていたのだ。ネロの事も茜ちゃんの事も。

その時店舗の電話が鳴った。「あ、無事に旅立ったかな。。」と電話に出る

と本部からだった。

『アメリカ視察の件なのだが。。。』まだ夕方のピークタイム前だったので

これくらいの電話に出る余裕はあった。『はい、はい、、、、、、、、、』

、、、、記憶が、、、飛んでいる。ハッと気付くと病院のベッドの上に居

た。起き上がろうにも何かに縛り付けられているのか、身体が動かない。

何が起きているのかも全く分からない。それに。。。耳も聞こえないし声も

出ない。うっすらと目だけ見える。視界もかなりぼんやりしている。息が苦

しい。何かしらチューブが挿入されている事はわかった。口の横にちらっと

太いチューブの様なものが見えたからだ。でも、口は動かないし感覚もな

い。だんだん意識がはっきりしてきた。それでもかろうじて目が見える様に

てきた程度だ。目の前で白衣を着た男性と女性がライトで僕の目を照らしな

がら何かを話している。聞こえないが眩しそうにしている事は伝わったみた

いだ。師匠、お母様、茜ちゃんが部屋に入ってきて、茜ちゃんとお母さんは

泣いている。師匠は心配そうにベッドに横たわる僕を見つめている。

「何だ?何があったんだ?何で喋ることも出来なければ耳も聞こえない

んだ?」

茜ちゃんが泣きながら移動した。どうやら僕の手を握っているみたいだ。

感覚は。。。ない。。。

せめて言葉が話せたら。文字が書ければ伝わるのに。耳が聞こえないから

状況を知ることも出来ない。。。

師匠がハッとした顔をして部屋を出て行った。目は動くようになってきた

ので横の動きはわかる。でも顔は動かない。師匠が入ってきた。何かゴソゴ

ソしているのをお母様がしゃがんで見ているようだ。こちらはベッドの上で

目しか動かないからしゃがまれると全く見えない。師匠が紙に何か書いた

ものを僕に見せた。目を凝らしてみてみると

「これがわかるのなら目を回とじろ」 と書いてあった。

理解出来た僕はパチリと1回瞬きをした。また何か書いている。

「本当にわかるのか?本当なら2回、目をとじろ」と書いてある。

僕はわかったので2回、パチパチと瞬きをした。どうなってるんだ?

師匠とお母様と茜ちゃんが手を取り合って泣きながら喜んでいる様子が

見える。。。え、、、僕はそんな状態なのか?主治医らしき男性と看護師

さんが退室した。そこからは師匠の字と僕の瞬きでの会話が始まった。

「よく生きてたな!心配したんだぞ!」・・・「パチリ」

「もうてっきりダメかと思ったぞ、よかった!」・・・「パチリ」

急いで書いてくれている、字がぐしゃぐしゃだ。。。

「ワシがわかるか?」・・・「パチリ」

茜ちゃんが紙とペンを師匠から奪った。

「私、茜、わかる?」・・・「パチリ」

「お母さんも来てるのよ、わかる?」・・・「パチリ」

そりゃわかるよ、、、そう思いながらも何もできないのがもどかしい。

「風間君、ずっと意識なかったのよ」・・・「パチリ、パチリ、パチリ」

『は?』という感覚だ。何があった?なぜ?どのくらい?どんな状態?

聞きたい事は山ほどあれど、、何もできない。瞬きだけだ。

「痛くない?」・・・「パチリ」痛いどころか感覚もない。

「これ、わかる?」・・・「パチリ、パチリ」なんだ?

「2回はわからないってこと?」・・・「パチリ」

3人で何かしゃべっている。また書き始めた。

「耳、きこえないの?」・・・「パチリ」

「生きていてくれてありがとう、心配したんだよ」・・・「パチリ」

僕はどうしたらいい??鏡で自分を写して見せて欲しいくらいだ。

ずっと泣いていたお母様に茜ちゃんがハンカチを渡した。茜ちゃんは

別のハンカチを出して涙を拭い、お母様の方を向きながら何か話している。

お父さんに紙とペンが渡った。

「わけわからんだろう?」・・・「パチリ」

「説明してやろうか?」・・・「パチリ」

「会社から電話アリ。行くと血まみれ。199電話」・・・「パチリ」

何で急に暗号みたいなんだ?そうか、伝える事を簡潔にする為か!

「頭の中血がいっぱい、早く見つけた、助かった」・・・「パチリ」

な!くも膜下出血か!!だから麻痺で動かないのか!やっと少しわかった。

「ここは、面会謝絶」・・・「パチリ」

「ワシらも長くは居られない、明日また来る」・・・「パチリ」

情報少なっ!!! まあでも生きていてみんな喜んでくれて、意思の疎通も

出来た。何日寝ていたのかわからないが、なんとかなるだろう。。

「風間君、3か月ぶりの世界はどうよ?」・・・「パチリパチリパチリ」

3か月!!! 店舗はどうなってる?仕事は?ネロはどうなった?

変える間際にあっという感じで茜ちゃんが書いた。

「ネロはペット霊園でお星さまになったよ。ネロが風間君返してくれた」

「パチリ」、、目から涙が溢れるのが分かった。視界が潤んだからだ。

茜ちゃんが泣きながら拭いてくれた。「また明日来るね」・・・「パチリ」

そこから記憶がなくなった。すごく疲れたのを覚えている。

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